実務シリーズ:改正育児・介護休業法 – その2 規程の改訂事例

実務シリーズ:改正育児・介護休業法 – その2 規程の改訂事例

今回の改正育児・介護休業法が求める育児・介護休業規程の改訂のサンプルをご紹介します。

厚生労働省から発表された内容にPMPとしてのコメントを付記等してのご案内となります。
ご関心ある方は 育児・介護休業等に関する規程例ページ、さらに「育児・介護休業等に関する規則の規定例(簡易版)」 (wordファイル)をご参照ください。

特に来年10月施行開始となる「柔軟な働き方を実現するための措置について」の条は、各社が取り上げる選択肢の内容に即して改訂内容を作成する必要があります。
それ以外の条についても、各社の現在の規程に即して適宜変更が必要となります。
あくまでも来年施行の改正法に則してどんな範囲で育児・介護休業規程を改訂しなければならないのかという、大まかなイメージをこれにより把握してください。
なお、各社の具体的な対応についてはPMPにご相談ください。


まずは2025年4月1日から施行される改正に関連する、規程の改訂例です。

第××条(子の看護等休暇)
1 小学校第3学年修了までの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)は、次に定める当該子の世話等のために、就業規則第〇条に規定する年次有給休暇とは別に、当該子が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、子の看護等休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
一 負傷し、又は疾病にかかった子の世話
二 当該子に予防接種や健康診断を受けさせること
三 感染症に伴う学級閉鎖等になった子の世話
四 当該子の入園(入学)式、卒園式への参加
ただし、労使協定により除外された、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員からの申出は拒むことができる。《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》
2 子の看護等休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。

第××条(介護休暇)
1 要介護状態にある家族の介護その他の世話をする従業員(日雇従業員を除く)は、就業規則第〇条に規定する年次有給休暇とは別に、対象家族が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、介護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
ただし、労使協定により除外された、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員からの申出は拒むことができる。《法に基づき労使協定の締結により除外可能な者を除外する例》
2 介護休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。

第××条(育児・介護のための所定外労働の制限)
1 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(日雇従業員を除く)が当該子を養育するため、又は要介護状態にある家族を介護する従業員(日雇従業員を除く)が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。
2 1にかかわらず、労使協定によって除外された次の従業員からの所定外労働の制限の請求は拒むことができる。 一 入社1年未満の従業員
二 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
3    (略)


次に、2025年10月1日から施行開始の「柔軟な働き方を実現するための措置」に伴う規程改訂例です。

右図が、以下ご紹介する規程改訂の一事例の前提となる、法改正の概要です。
改めてこの全体像をご理解ください。
なお、対象は3歳から小学校就学始期までとなります。

選択肢は「フルタイムでの柔軟な働き方」で4つ、これに加えて「短時間勤務制度」の合計5種類のうちから2つ以上を取り上げることとされています。
改訂の一事例としたのは、厚生労働省から発表されたものですが、あくまでも “例えば・・・” の事例です。
各社は実情に合わせて合計5種類のうちからもっとも適当な選択肢を2つ以上決定して、規程として記載しなければなりません。
PMPの経験を踏まえると、すでに3歳以降の短時間勤務の選択肢は導入済の企業もあります。比較的短時間勤務を選択する企業が多い印象を持っています。
しかしながら、労働力不足がますます深刻化する労働市場を考えると、将来的に短時間勤務を認め続けることの妥当性もこの機会にぜひ検証していただきたい。社員から短時間勤務の希望があっても、深刻な人手不足からそれに応えることがわが社にとって最善の選択肢であるか、という検証です。
仮に短時間勤務を選択肢として維持する場合は是非、社員にとっても短時間勤務者ではなくフルタイマーとして賃金・賞与をフルに支給されることは大きなメリットといえること、そのための “柔軟な働き方” の選択肢となることを説明し、理解を得るべく努力してください。
最後に、会社として2つ以上の柔軟な働き方の選択肢を決定する前に、従業員代表等からの意見を聴取する機会を設けなければならないとされている点もご注意ください。この従業員代表等からの意見徴取をせずに選択肢を決定し規程を改訂したならば、それは違法となるリスクをご承知おきください。

その意味では、従業員代表等からの意見徴取は文書で記録として保存することをお勧めします。

第××条(柔軟な働き方を実現するための措置)
1 3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(対象従業員)は、柔軟な働き方を実現するために申し出ることにより、次のいずれか 1つの措置を選択して受けることができる。
(その上での、“例えば・・・” の例です。)
一 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ    (注:始業・終業時刻の繰上げ・繰下げに代わり、フレックスタイムを導入するという選択肢も考えられます。)
二 テレワーク    (注:すでにテレワーク導入済でテレワーク規程がある企業については、導入済のテレワーク規程を、さらに今回の柔軟な働き方の措置の対象者限定で適宜修正する必要があるかという点もこの機会に、従業員代表等の意見徴取や対象となる可能性のある従業員らの実態を踏まえてご検討ください。)

2 1にかかわらず、次のいずれかに該当する従業員からの申出は拒むことができる。
一 日雇従業員
二 労使協定によって除外された次の従業員
(ア)入社1年未満の従業員
(イ)1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
3 1の一に定める始業・終業時刻の繰上げ・繰下げの措置内容及び申出については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の始業及び終業の時刻について、以下のように変更することができる。
・通常勤務 = 午前8時30分始業、午後5時30分終業
・時差出勤A = 午前8時始業、午後5時終業
・時差出勤B = 午前9時始業、午後6時終業
・時差出勤C = 午前10時始業、午後7時終業
二 申出をしようとする者は、1回につき1年以内の期間について、制度の適用を開始しようとする日及び終了しようとする日並びに 時差出勤A から 時差出勤C のいずれに変更するかを明らかにして、原則として適用開始予定日の1か月前までに、育児時差出勤申出書により人事担当者に申し出なければならない。
4 1の二に定めるテレワークの措置内容及び申出については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、本人の希望により、1月につき10日を限度としてテレワークを行うことができる。
二 テレワークは、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して実施することができるものとする。
三 テレワークの実施場所は、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社の認めた場所に限る。)とする。
四 テレワークを行う者は、原則として勤務予定の2営業日前までに、テレワーク申出書により所属長に申し出なければならない。

以    上