実務シリーズ:改正育児・介護休業法 – その1 Q&A
来年4月と10月、二段階に分けて施行される改正育児・介護休業法については、これまでも何度となくPMP Newsでお知らせをしています。
ただでさえ、複雑な育児・介護休業法にさらに細かい改定を加え、育児・介護規定の改訂、労使協定の結びなおしに加えて、事業主としての措置義務も加わってきます。
11月に入り、ようやく厚生労働省から改正法関連の事務取扱いに関する情報が公表されだしました。何回かに分け、「実務シリーズ」と題して発信していきます。
まずは Q&A から。
PMPが注目した Q&A に絞り、厚生労働省の原文を思い切り “端折って”、エッセンスをお伝えします。なお、全体版は記事の最後にご案内します。
ここでは、Q&A のうち、掲記改正の概要一覧の「1.子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」からのピックアップ。
注1:何れも「措置」とあるのは、 “柔軟な働き方を実現するための措置” の意味です。
注2:改正の概要一覧の 1.①⑤は来年10月、②③④は4月からの施行。
措置① について
Q2-2: 事業主がこの措置を選択する場合に、過半数代表等から意見を聴取することとなっているが・・・?
A:施行(2025年10月1日)より前に過半数代表等の意見を聴く必要があります。
Q2-4:企業単位で2つ措置するのではなく、業務 の性質又は業務の実施体制に照らして、事業所単位や事業所内のライン単位、職種ごとに措置してもよいか?
A:OKです
Q2-6:事業主は正規・非正規雇用労働者間で異なる措置を選択してもよいか?
A:同一労働同一賃金に違反しない様に注意してください。
Q2-7:既に事業主が独自に当該措置で2つ以上の制度を導入している場合には、特段、新たな対応は求められないという理解でよいか?
A:既に社内で導入している制度をこの措置として選択して講ずることは可能。 ただし、この措置は3歳から小学校就学の始期までの子の新たな措置。改めて過半数代表等から意見を聴取する必要があります。
Q2-8:「始業時刻等の変更」のうち、 ① 「フレックスタイム制」と「始業終業時刻の変更」のどちらも選べる制度を設けた場合、措置を2つ設けたことになるか?
A:NOです
Q2-10:事業主が選択して措置する制度の中にある「テレワーク等」について、「等」には 何が含まれるか?
A:「テレワーク」は通常「情報通信技術を利用して行う事業場外勤務」を指すとされています。「情報通信技術を利用」しない業務も想定されることから「テレワーク等」との表記。またサテライトオフィス等も含まれます。
Q2-11:「テレワーク等」について、月に10日とされているが、3か月で30日にするなど、1年に平均して月 10 日以上の仕組みにしてもよいか?
A:OKです
Q2-12・14: 新たに選択肢となった「労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与」とは?また、付与の仕組みについては?(Q2-14)
A:例えば、通常保育所に子を迎えに行く配偶者が出張等でお迎えができない日に時間単位で休暇を取得し保育所に子を迎えにいく、子が就学する小学校等の下見にいくなど、育児目的休暇とは別に、かつ原則時間単位で利用できる休暇です。取得理由は、就業しつつ子を養育するのに資するものであれば、いかなる目的に利用するかは労働者に委ねられます。
また、1年に 10 日以上の休暇の付与だが、付与単位を半年につき5日、1か月につき1日等とし、トータルで1年に 10 日以上となるような付与の仕組みでもOK。要は1年単位で計10 労働日以上の休暇の確保で問題ありません。
Q2-15:「保育施設の設置運営等」の「等」には何が含まれるか?
A:例えば事業主がベビーシッターを手配し、かつ、ベビーシッターに係る費用を補助することが含まれます。
※「手配」とは、ベビーシッター派遣会社と事業主が契約を締結して労働者からの希望に応じて当該会社に事業主が派遣の依頼を行うほか、ベビ-シッター派遣会社と事業主が契約し、労働者が直接当該会社に派遣の依頼をすることも含まれる。
Q2-17:当社では、福利厚生サービスを提供する企業と契約し、年会費を支払い、カフェテ リアプランの一環として、ベビーシッターのサービス等を選択・利用できるようにしているが?
A:これも措置を講じたことになります。
Q2-20:出向者については、出向元・出向先どちらの事業主が行うべき?
A:ケースバイケース。要は雇用管理を行っている事業主が行うべきものです。
Q2-21:3歳の誕生日の1か月前までの1年間(1歳 11 か月に達する日の翌々日から2歳 11 か月に達する日の翌日まで)の計算方法は?
A:例えば、3月 15 日生まれの子の場合、「1歳の2月16日から2歳の2月15日までの1年間となります。
注:(Q2-23の回答より)施行日の2025年10月1日時点で、子が2歳11か月に達する日の翌日を過ぎている場合(子の誕生日が2022年10月31日以前)には、個別の周知・ 意向確認の必要はない。
しかしながらこの措置は子が3歳の誕生日から小学校就学前まで利用可能となっていることから、小学校就学前までの子を持つ労働者から制度の利用意向が示された場合には、これに応じる必要があります。
Q2-26:勤続1年未満を措置の適用の対象外としている場合、子が3歳に到達する時点では措置の対象とはならないが、将来的には措置の利用が可能になる可能性がある場合は?
A:3歳の誕生日の1か月前までの1年間のいずれかの時点において個別の周知の措置は実施が必要だが、意向確認は、子の3歳到達時点では措置の利用が可能ではないため不要。
ただし、1⑤ 就業に関する条件に係る労働者の意向の聴取・配慮の対象となることに留意(Q2-36参照)。
措置③ について
Q2-32:子の看護休暇について、例えば、授業参観や運動会に参加する場合でも取得可能?
A:法的には「対象外」でよい。
Q2-33:「小学校第3学年修了までの子」の定義は?
A:法の定義は「9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子」のため、就学猶予を受けて小学校入学が1年遅れた子については小学校2年生修了まで
措置⑤ について
Q2-35:妊娠・出産等の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の 両立に関する個別の意向聴取と配慮が事業主に義務づけられるが、具体的にどのようなことをすればよいか?
A:聴取内容は、① 始業及び終業の時刻等の勤務時間帯、② 勤務地(就業の場所)、③ 両立支援制度の利用期間、④ 仕事と育児の両立の支障となる事情の改善に資する就業条件として何か希望がないかの確認。
「配慮」とは、事業主が意向の聴取をした労働者の就業条件を定めるに当たり、意向も踏まえ、自社の状況に応じて「配慮しなければならない」ということです。
事業主として意向の内容を踏まえた検討を行うことは必要。ただしその結果、何らかの措置を行うか否かは事業主が自社の状況に応じて決定で可。
なお、検討の結果意向に沿った対応が困難な場合には、困難な理由を労働者に説明するなどの丁寧な対応を行うことが重要。(注PMP:“重要” とされており “必要”との記載でない点に注意)
Q2-36:令和3年改正では、妊娠・出産等の申出時において、既に「個別の周知・意向確認」 が義務づけられれていたが、今回の改正により、新たに義務づけられた「個別の意向聴取・配慮」とは、何が異なるのか?
A:先の改正では育児休業制度等の周知と利用の意向確認に留まっていたが、今回の改正は育児に関する状況に起因する職業生活と家庭生活との両立を円滑にすることを目的として、職業生活と家庭生活との両立の支障となる事情の改善に資する就業に関する条件等について聴取し、その意向に配慮することが求められています。
Q2-40:労働者又はその配偶者が妊娠・出産を申し出たときに、どのような内容を周知しなければならないか?今回の改正に関連して、短時間勤務制度や育児時短就業給付についても、併せて周知が必要か?
A:周知すべき内容は、① 育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)に関する制度、 ② ①の申出先、③ 育児休業給付・出生後休業支援給付に関すること、④ 労働者が育児休業・出生時育児休業(産後パパ育休)期間について負担すべき社会保険料の取扱い。
短時間勤務制度や育児時短就業給付等は周知 “すべき” ではなく周知が “望ましい”もの。
Q2-41:「個別の意向の聴取」における「就業の場所」とは、具体的にどのようなことを聞くのか?
A:勤務地が仕事と育児の両立を困難にしていないか確認し、その上で自社の状況に応じて配慮することが求められます。
Q2-43:聴取した意向について、事業主は具体的にどのように配慮するのか?必ず、労働者の希望を叶えなければならないのか?
A:意向を踏まえた検討を行った結果、何らかの措置を行うか否かは事業主が自社の状況に応じての決定で可。必ず労働者の意向に沿った対応をしなければならないということではありません。なお、検討の結果、労働者から聴取した意向に沿った対応が困難な場合には、困難な理由を労働者に説明するなどの丁寧な対応を行うことが重要です。
ご参考までに
Q4-1:介護離職防止のための個別の周知措置はどのような内容か? (注PMP:Q4-1の一部のみ引用)
A:周知事項は、① 介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等、② ①の申出先、③ 介護休業給付に関すること。
また ①の両立支援制度は、① 所定外労働の制限、② 深夜業の制限、③ 所定労働時間の短縮等となります。
Q4-12:介護関連での雇用環境の整備等のうち、「研修の実施」について
A:① まとめて実施は差し支えない。対象者は、全ての労働者が望ましいが、少なくとも管理職は研修を受けたことのある状態にすること。② 動画によるオンライン研修は可。労働者が研修を受講していることを担保すること。③ 単に資料や動画の会社掲示板への掲載や配付のみは不可。
Q&A全体は 令和6年改正育児・介護休業法に関するQ&A(令和6年11月1日時点)をご参照ください。
以 上