退職金の取扱いの変更 – 厚生労働省モデル就業規則の改定

退職金の取扱いの変更 – 厚生労働省モデル就業規則の改定

PMPでもモデル就業規則を持っていますが、PMP版は厚生労働省版とはまた異なる内容としています。
とは言え、厚生労働省のモデル就業規則 が、労働法改正もないこのタイミングで改定されるということには注目していただきたいと考え、PMP News で取り上げてみました。

労務関連の報道では、「厚生労働省のモデル就業規則が退職金を主としてこの度改定された」とありましたが、PMPで前版と比較検証したところ、退職金部分のみの改定でした。

世間で広く活用されている、勤続の短い自己都合退職者に対する退職金不支給の記載を、今回の改定では削除されています。モデル就業規則のかかる規定が転職の障壁となっているとの指摘に、ようやく厚生労働省が応えたものです。
先日岸田政権が打ち出した三位一体の労働市場改革がこの背景にはあります。労働市場改革の一つは成長分野への労働移動の円滑化ですが、そのためには労働市場の流動性を高めなければなりません。その一方で多くの企業の退職金制度では 自己都合退職の場合の退職金の減額、勤続年数・年齢が一定基準以下であれば退職金を不支給、といった取り扱いが広く行われてきており、すでに労働慣行となっているとの認識があるようです。
これを打破するために、まずは企業のお手本となっている厚生労働省のモデル版就業規則の改定となったものです。
雇用保険の失業給付制度も、1年以内にリ・スキリングに取り組んでいた場合は、事項都合退職であっても失業給付の申請時点から遡って会社都合の場合と同じ扱いとするなど、自己都合の場合の要件を緩和する方向での改正が予定されています。

変更点は「第54条 退職金の支給」の条文と解説になります。具体的な内容は以下です。

前)令和4年11月版の太字箇所が削除されました。

第8章  退職金
(退職金の支給)
第54条  労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続〇年未満の者には退職金を支給しない。また、第68条第2項により懲戒解雇され た者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

【第54条  退職金の支給】の解説
退職金制度は必ず設けなければならないものではありませんが、設けたときは、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、額の計算及び支払の方法、支払の時期などを就業規則に記載しなければなりません。

新)令和5年7月版

第8章  退職金
(退職金の支給)
第54条  労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、第68条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
2 継続雇用制度の対象者については、定年時に退職金を支給することとし、その後の再雇用については退職金を支給しない。

【第54条  退職金の支給】の解説 太字部分が新たに記載されています。
退職金制度は必ず設けなければならないものではありませんが、設けたときは、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、額の計算及び支払の方法、支払の時期などを就業規則に記載しなければなりません。また、不支給事由又は減額事由を設ける場合には、これは労基法第89条第3号の2に規定する退職手当の決定及び計算の方法に関する事項に該当するため、就業規則に明記する必要があります。

以    上