PMP、一安心! – 各社の男女の賃金差。しかしながら・・・
今月10日過ぎに、日本経済新聞では、昨年7月の女性活躍推進法改正により常用労働者数301人以上の企業に義務化された社員の男女間の賃金差についての報道がありました。改正法では改正後の決算期から3か月以内の情報開示義務となっています。多くの日本企業は3月決算ですので、その3か月後6月末あたりで各社の男女の賃金差の開示情報が出揃ったいう事だと思います。
日経新聞によれば公表された約7100社の開示情報を分析したところ、「全労働者の格差は30.4%。正規労働者は25.2%、非正規労働者は22.3%」。
あるいはご記憶の方もおられるかもしれませんが、PMPでは今年の3月27日に 日本の男女賃金の差異は75.7%!? と題するNewsを発信しています。
世の中は“女性活躍”をより推進する方向で動いています。そんな折に、各社は初めて自社の男女の賃金差データを公表しなければなりません。自社の男女の賃金差が、他社に比べるとどうなのか?どの程度の賃金差であれば世間並あるいは世間よりも“良い”とされるのか?
各社の人事の担当の方々はずいぶんと悩まれていました。
PMPでは各社の期末日の少し前の3月27日に、各社の人事担当者の参考情報の一つとして、厚生労働省の賃金データを材料に、“男女の賃金差”を試算して発表しました。
当時、試算には自信はあったものの、別の角度から試算結果を検証するようなデータもなく、最後はCross Fingersでした。PMPは、今回の日経新聞の記事で、ホッとしました。日経新聞に感謝です。
特に正社員の男女の賃金差については、女性管理職者数に原因があると思います。日経新聞でも、日本の女性管理職比率は2020年13%、対して欧米諸国は30〜40%との報道があります。女性管理職比率が30%に引き上がると、男女の賃金差は10%近く縮まるというのがPMP試算でもあります。
もっとも、多くの企業が、管理職定数を増やして、その増加分を新たな女性管理職に充てようとする動きであれば、男女の賃金差はそこまでの改善にはなりません。あくまでも会社で必要な管理職ポスト数は一定のままでその内の30%が女性管理職になる前提の試算ではあります。
さて、日経新聞の記事で、更に注意を喚起されるのは、男女の賃金差が、正社員25.2%、非正規22.3%であるのに対して、全労働者ベースでは30.4%、と全労働者の賃金差が拡大する点です。
これは、まず賃金は 正社員の賃金額>非正規社員の賃金額 であるという傾向を念頭に置かなければなりませんが、要は賃金が正社員よりも低い非正規社員の女性が多いことからの帰結となります。
これは、企業の責任でしょうか?
非正規社員として働く女性の多くには4つの壁があります103万円の壁(所得税と住民税)、106万円の壁(社会保険加入)、130万円の壁(社会保険の扶養)、150万円の壁(配偶者控除)。岸田内閣ではこの106万円の壁だけ取り上げています。社会保険各法の世帯主という考え方には何も手を付けず、106万円の壁を超えて賃金を支払う中小事業主のみを対象に一定期間(3年から5年程度と言われています)助成金を支給するという何とも中途半端かつ片手間の対応でやり過ごそうとしています。社会保険や税にある旧態依然とした世帯という考え方を抜本的に見直し、個人単位に切り替えるという対応に着手しなければ、声高に掲げる“新しい資本主義”も、“女性活躍・男女共同参画会議の骨太の方針”も、“異次元の少子化対応”も、上っ面だけの軽佻浮薄な議論の様に思えてなりません。
以 上