改正育児休業法関連:厚生労働省から10月からの法改正対応のモデル規定案が発表 – 柔軟な働き方を実現するための措置に関して –

ご高承の通り、本年10月から施行される改正育児休業法では、3歳から小学校就学始期までの子を持つ社員に対して、法が定める5つの選択肢のうち、最低でも2つ以上を会社が定め、社員が何れかを選択でいる措置を設けなければなりません。
(下図をご参照。『PMP2025 改正育児・介護休業法マニュアル』からの抜粋となります。)
今般、厚生労働省が、この改正法対応として、上記の講ずべき措置一つひとつについて、規定案を作成しました。ご案内します。実はPMPとしては異論反論している箇所があります。ご注目ください。
なお、厚労省の育児介護規定モデルでは第20条がこれに該当となりますので、以下の冒頭が第20条となっています。また社内手続きを、様式番号を使いながら規定化している条項は各社の手続きはもっと柔軟に効率的に行われるべきでありまた規定に記載する必要もないとの判断から削除しています。
《始業・終業時刻の繰上げ・繰下げの例》
(柔軟な働き方を実現するための措置)
第20 条
1 3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する従業員(対象従業員)は、柔軟な働き方 を実現するために申し出ることにより、次のいずれか 1 つの措置を選択して利用することができる。
一 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
二 テレワーク
2 本条第1項にかかわらず、以下の従業員からの申出は拒むことができる
一 日雇従業員
二 労使協定によって除外された次の従業員
(ア) 入社 1 年未満の従業員
(イ) 1 週間の所定労働日数が 2 日以下の従業員
≪始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げの規定例≫
(略)始業・終業時刻の繰上げ・繰下げの措置内容及び申出については、 次のとおりとする。
一 対象従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の始業及び終業の時刻について、以下のように変更することができる。
・通常勤務=午前 8 時 30 分始業、午後 5 時 30 分終業
・時差出勤 A=午前 8 時始業、午後 5 時終業
・時差出勤 B=午前 9 時始業、午後 6 時終業
・時差出勤 C=午前 10 時始業、午後 7 時終業
二 申出をしようとする者は、1 回につき 1 年以内の期間について、制度の適用を開始しようとする日及 び終了しようとする日並びに時差出勤 A から時差出勤 C のいずれに変更するかを明らかにして、原則として適用開始予定日の1か月前までに、時差出勤申出書(社内様式YY)により人事部労務課に申し出なければならない。申出書が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、育児時差出勤取 扱通知書(社内様式YY)を交付する。その他適用のための手続等については、第Z条から第Z条までの規定を準用する。
PMPからの付言:製造現場でよく導入されているシフト勤務について。
厚生労働省はQ&Aの中で、“一般論として、例えば交替制勤務(例:早番9時~17 時、遅番 13 時~21 時)の労働者について、通常であればいずれの勤務時間帯も一定割合以上の勤務が求められる場合に、希望したものは早番勤務のみとすることを認める措置は、新制度(柔軟な働き方を実現するための措置)のうち「始業時刻等の変更」を措置したこととなります。” と回答しています。これも押さえておくべき事項だと思います。
≪テレワークの措置の規定例≫
(略)テレワークの措置内容及び申出については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、本人の希望により、1 月につき 10 日を限度としてテレワークを行うことができる。
二 テレワークは、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して実施することができるものとする。
三 テレワークの実施場所は、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社の認めた場所に限る。)とする。
四 テレワークを行う者は、原則として勤務予定の2 営業日前までに、テレワーク申出書(社内様式〇)により所属長に申し出なければならない。
(始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げとテレワーク共通の項目として) 注:以下の5・6は他の選択肢の場合も同様に付記する
5 本制度の適用を受ける間の給与及び賞与については、通常の勤務をしているものとし減額しない。
6 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。
《フレックスタイム制度の例》
(略)に定めるフレックスタイム制度の措置内容及び申出については、次のとおりとする。
一 フレックスタイム制度の適用を受ける対象従業員の始業および終業の時刻については、従業員の 自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、 午前●時から午前●時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後●時から 午後●時までの間とする。
二 午前●時から午後●時までの間(正午から午後 1 時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。※1 (※1はコアタイムを設ける場合に必要な規定)
三 清算期間は 1 箇月間とし、毎月●日を起算日とする。
四 清算期間中に労働すべき総労働時間は、●時間とする。
五 標準となる 1 日の労働時間は、●時間とする。
六 申出をしようとする者は、1回につき、1年以内の期間について、制度の適用を開始しようとする日 及び終了しようとする日を明らかにして、原則として適用開始予定日の 1 か月前までに、フレックス タイム申出書(社内様式YY)により人事部労務課に申し出なければならない。申出書が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、フレックスタイム通知書(社内様式YY)を交付する。
《就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の例》
(略)に定める養育両立支援休暇の措置内容及び申出については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、子の養育を行うために、就業規則第◯条に規定する年次有給休暇とは別に、 1 年間につき 10 日を限度として、養育両立支援休暇を取得することができる。この場合の 1 年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
二 養育両立支援休暇は、時間単位で始業時刻から連続又は終業時刻まで連続して取得することができる。
三 取得しようとする者は、原則として、養育両立支援休暇申出書(社内様式 )を事前に人事部 労務課に申し出るものとする。
4 (略)
5 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した基本給と諸手当の全額を支給する。
6 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、短縮した時間に対応する賞与は支給しない。
7 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているものとみなす。👈PMPは規定案の“通常の勤務をしているものとみなす”という記載は反対します。
厚労省は、掲記5及び6については以下のようにコメントしています。
掲記5及び6については、様々な内容が考えられます。なお、①の(3)短時間勤務制度や(4)養育両立支援休暇を導入する場合に、勤務しなかった時間について賃金を支払わないことは差し支えありませんが、勤務しなかった時間数を超えて賃金を減額したり、賞与、昇給等で不利益な算定を行うことは禁止されています(法第 23 条の3第7項)。
PMPは賞与や退職金、また昇給の基本的考え方は休業期間中は “No Work No Pay” の原則を貫くべきだと考えます。
その意味では、この養育両立支援休暇取得期間は、賞与の支給及び昇給査定や退職金査定の対象期間、これらからは除外とすべきと考えています。問い合わせたところ、厚生労働省担当もこのモデル規定の記載(掲記第7項)は法を超える対応であることを認めています。
PMPは、行政が示すモデル規定であれば、法を超える規定条項部分の記載は、本文中でも少なくとも斜字体やゴシック体として、通常とは一目瞭然で異なる記載とするような注意喚起をすべきと考えています。
《短時間勤務の例》
(略)に定める短時間勤務の措置内容及び申出については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、申し出ることにより、就業規則第◯条の所定労働時間について、以下のように変更することができる。 所定労働時間を午前 9 時から午後 4 時まで(うち休憩時間は、正午から午後 1 時までの 1 時間 とする。)の 6 時間とする。
二 申出をしようとする者は、1 回につき、1 か月以上 1 年以内の期間について、短縮を開始しようと する日及び短縮を終了しようとする日を明らかにして、原則として、短縮開始予定日の 1 か月前までに、短時間勤務申出書(社内様式〇)により人事部労務課に申し出なければならない。申出書が提出されたときは、会社は速やかに申出者に対し、短時間勤務取扱通知書(社内様式〇)を交付する。
同様に厚生労働省の以下の事項にも注意を払いましょう。
4 (略)
5 本制度の適用を受ける間の給与については、別途定める給与規定に基づく労務提供のなかった時間分に相当する額を控除した基本給と諸手当の全額を支給する。
6 賞与については、その算定対象期間に本制度の適用を受ける期間がある場合においては、短縮し た時間に対応する賞与は支給しない。
7 定期昇給及び退職金の算定に当たっては、本制度の適用を受ける期間は通常の勤務をしているも のとみなす。👈 PMPは厳密には定期昇給の査定も短縮された所定労働時間相当分は考慮されるべきとは思います。
《保育施設の設置運営の例》
(略)に定める事業所内保育施設の措置内容については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、会社が設置する社内保育室を利用することができる。ただし、既に定員に達しているときは、この限りでない。
二 利用者は、会社に対し食費(実費)を各月◯円支払うものとし、これ以外の社内保育室に関する費用は原則として会社が負担する。
三 社内保育室の利用時間は、原則として平日の午前◯時◯分から午後◯時◯分まで及び土曜日の 午前◯時◯分から午後◯時◯分までとし、日曜、祝日及び会社が定めた休日は、閉室とする。
《ベビーシッターの手配及び費用補助の例》
(略)に定めるベビーシッターサービスの措置内容については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、会社が締結した契約に基づく保育サービス会社による当該子に係るベビーシッタ ーサービス(以下「保育サービス」という。)を利用した際に要した費用について、会社から助成を 受けることができる。
二 助成額は、従業員が保育サービスの利用に当たり支払った額の〇分の〇に相当する額とする。助成対象となる保育サービスの利用日数の限度は、年間〇日とする。
三 助成を受けるための手続等は、次によるものとする。
(1)助成を希望する者は、原則として助成を希望する保育サービスの利用を開始しようとする日の◯日前までに、保育サービス利用費用助成申請書(社内様式◯)により人事部労務課に申し出な ければならない。
(2)保育サービス利用費用助成申請書(社内様式◯)が提出されたときは、会社は、速やかに当 該保育サービス利用費用助成申請書を提出した者に対する保育サービス利用費用助成の可否を 決定し、通知する。
四 助成額の支給は、次によるものとする。
(1)前号により保育サービス利用費用助成を受けることができる旨の通知を受け、保育サービスを利用した者は、利用した当該サービスに係る当月の支払分について、保育サービス利用報告書 (社内様式◯)に領収書を添付の上、翌月◯日までに人事部労務課に提出するものとする。
(2)人事部労務課は、(1)の保育サービス利用報告書及び領収書を審査の上、当該利用額に係 る助成額を口座振込又は現金にて支払うものとする。
(略)に定める事業所内保育施設の措置内容については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、会社が設置する社内保育室を利用することができる。ただし、既に定員に達しているときは、この限りでない。
二 利用者は、会社に対し食費(実費)を各月◯円支払うものとし、これ以外の社内保育室に関する費用は原則として会社が負担する。
三 社内保育室の利用時間は、原則として平日の午前◯時◯分から午後◯時◯分まで及び土曜日の午前◯時◯分から午後◯時◯分までとし、日曜、祝日及び会社が定めた休日は、閉室とする。
《ベビーシッターの手配及び費用補助の例》
(略)に定めるベビーシッターサービスの措置内容については、次のとおりとする。
一 対象従業員は、会社が締結した契約に基づく保育サービス会社による当該子に係るベビーシッターサービス(以下「保育サービス」という。)を利用した際に要した費用について、会社から助成を 受けることができる。
二 助成額は、従業員が保育サービスの利用に当たり支払った額の○分の○に相当する額とする。助成対象となる保育サービスの利用日数の限度は、年間○日とする。
三 助成を受けるための手続等は、次によるものとする。
(1)助成を希望する者は、原則として助成を希望する保育サービスの利用を開始しようとする日の◯日前までに、保育サービス利用費用助成申請書(社内様式◯)により人事部労務課に申し出な ければならない。
(2)保育サービス利用費用助成申請書(社内様式◯)が提出されたときは、会社は、速やかに当該保育サービス利用費用助成申請書を提出した者に対する保育サービス利用費用助成の可否を 決定し、通知する。
四 助成額の支給は、次によるものとする。
(1)前号により保育サービス利用費用助成を受けることができる旨の通知を受け、保育サービスを利用した者は、利用した当該サービスに係る当月の支払分について、保育サービス利用報告書 (社内様式◯)に領収書を添付の上、翌月◯日までに人事部労務課に提出するものとする。
(2)人事部労務課は、(1)の保育サービス利用報告書及び領収書を審査の上、当該利用額に係る助成額を口座振込又は現金にて支払うものとする。
以 上