法改正情報 – 改正雇用保険法などの概要

法改正情報 – 改正雇用保険法などの概要

これまでもPMP Newsでお知らせしていましたが、来年4月の施行を中心とした雇用保険法の改正が予定されています。今回は、これに、育児休業給付金関連の改正も併せて、再度取りまとめてみました。皆様の人事労務の実務にご活用ください。

まずは育児給付金関連から。

1.出生後休業支援給付の創設        <施行期日>2025(令和7)年4月1日

○ 子の出生直後の一定期間以内(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育児休業を取得する場合に、最大28日間、休業開始前賃金の13%相当額を給付し、育児休業給付とあわせて給付率80%(手取りで10割相当)へと引き上げることとする。

※ 配偶者が専業主婦(夫)の場合や、ひとり親家庭の場合などには、配偶者の育児休業の取得を求めずに給付率を引き上げる。                                                                  

                                                                             <財源>子ども・子育て支援金を充当


2.育児時短就業給付の創設 
           <施行期日>2025(令和7)年4月1日

○ 被保険者が、2歳未満の子を養育するために、時短勤務をしている場合の新たな給付として、育児時短就業給付を創設。
○ 給付率については、休業よりも時短勤務を、時短勤務よりも従前の所定労働時間で勤務することを推進する観点から、時短勤務中に支払われた賃金額の10%とする。

                                                                                 <財源>子ども・子育て支援金を充当
   

3.それ以外の雇用保険法改正の全体像は以下の通りです

多様な働き方を支えるセイフティネットの構築を意識したリスキリングの促進や、掲記でご紹介した育児休業関連支援の拡充を支える育児休業給付の財政運営の確保などが狙いとなっています。

(以下、3.の全体像とは順番は異なりますが・・・)

4.育児休業給付を支える財政基盤の強化
<施行期日>① 公布日又は2024(令和6)年4月1日のいずれか遅い方、② 2025(令和7)年4月1日

○ 男性育休の大幅な取得増等に対応できるよう、育児休業給付を支える財政基盤を強化するため、令和4年雇用保険法改正法の附則の規定を踏まえ、
① 令和6年度から、国庫負担割合を現行の1/80から本則の1/8に引き上げる
② 当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、本則料率を令和7年度から0.5%に引き上げる改正を行うとともに、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整する仕組み(注)を導入する

(注)前年度の決算を踏まえた該当年度の積立金残高(見込み)と翌年度の収入(見込み)の合計額が、翌年度の支出(見込み)の1.2倍を超える場合は、翌年度の料率を0.4%とすることができることとする。


5.自己都合離職者の給付制限の見直し
    <施行期日>2025(令和7)年4月1日

○ 離職期間中や離職日前1年以内に、自ら雇用の安定及び就職の促進に資する教育訓練を行った場合には、給付制限を解除。

※ このほか、通達の改正により、原則の給付制限期間を2ヶ月から1ヶ月へ短縮する。ただし、5年間で3回以上の自己都合離職の場合には給付制限期間を3ヶ月とする。


以下の教育訓練休暇給付金の創設教育訓練給付の拡充は政府が進めるリスキリングに沿うものです。
リスキリング、政府の勇ましい掛け声のわりには、さほど企業の教育研修部隊の関心が高まっていない様にも思えます。リスキリングを一般報道では “学びなおし” と言い換えていますが、これはミスリーディング。学びなおしは各個人の自発的なキャリア形成の意味がありますが、リスキリングは企業における新しい職務や業務を遂行するための新しいスキルや知識を身につけることであり、政府の意図はまさにそこにあると思います。企業がより自発的に自社におけるリスキリングプログラムを用意し、自社の新しい成長路線に即した人材の育成を進めて頂きたいと願うものです。決して、リストラ要員の再就職支援のための学びなおしではありません。
各企業の人材開発の担当者は、そのような視点から、教育研修プログラムを、これからのわが社の新しい事業戦略という視点で描きなおすことが必要となると思います。


6.教育訓練中の生活を支えるための給付の創設      
<施行期日>2025(令和7)年10月1日

○ 雇用保険被保険者が教育訓練を受けるための休暇を取得した場合に、基本手当に相当する給付として、賃金の一定割合を支給する教育訓練休暇給付金を創設する。上記のほか、雇用保険被保険者以外の者を対象に、教育訓練費用と生活費を融資対象とする新たな融資制度を創設予定。

 

7.教育訓練給付の拡充              <施行期日>2024(令和6)年10月1日

○ 教育訓練給付金の給付率の上限を受講費用の70%から80%に引き上げる。

・ 専門実践教育訓練給付金(中長期的キャリア形成に資する専門的・実践的な教育訓練講座を対象)について、教育訓練の受講後に賃金が上昇した場合、現行の追加給付に加えて、更に受講費用の10%(合計80%)を追加で支給する。
・ 特定一般教育訓練給付金(速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練講座を対象)について、資格取得し、就職等した場合、受講費用の10%(合計50%)を追加で支給する。


8.雇用保険の適用拡大
          <施行期日>2028(令和10)年10月1日

施行時期は最も遅い2028年ですが、週所定労働時間10時間以上への対象拡大により多くの労働者に雇用保険のセイフティネットが適用されることになります。この影響は極めて大きいものと思われます。

○ 雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象を拡大。(令和4年度末時点の被保険者数は約4,457万人)

※ 給付は別基準とするのではなく、現行の被保険者と同様に、基本手当、教育訓練給付、育児休業給付等を支給。

詳細は以下の “改正後” をご参照ください。


9.その他
(令和6年度末までの暫定措置)       <施行期日>2025(令和7)年4月1日

○ 雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、地域延長給付を2年間延長する。
○ 教育訓練支援給付金の給付率を基本手当の60%とした上で、2年間延長する。

※ そのほか介護休業給付に係る国庫負担割合を1/80(本則:1/8)とする暫定措置を2年間延長する。


以下は、<施行期日>2025(令和7)年4月1日

○ 就業手当を廃止するとともに、就業促進定着手当の上限を支給残日数の20%に引き下げる。

以    上