連邦法改正、アメリカのエグゼンプト適用対象の最低給与額の引上げ!?

連邦法改正、アメリカのエグゼンプト適用対象の最低給与額の引上げ!?

ご存じの通り、アメリカではいわゆるホワイトカラー層は、“エグゼンプト” として時間外労働の対象から除外されています。

このエグゼンプトの週給ラインが以下のように変更される予定となっています。
1.2024年7月1日から、週給ラインが現在の $684=107,388円(年間 $35,568 = 5,584,176円)から、$844 = 132,508円(年間 $43,888 = 6,890,416円)に引き上げられます。
2.さらに、2025年1月1日には、週給 $1,128 = 177,096円(年間 $58,656 = 9,208,992円)に再度引き上げられる予定です。
  注:$1.00 = 157円で換算

時間外労働の適用外の労働者の最低給与水準が大幅に引き上げられ、加えて、2022年からの急激な円安もあり、円換算ではかなりの高給取りでようやくエグゼンプトとなるという印象=誤解を持たれるかもしれません。

その誤解を訂正します。

まず、エグゼンプトの給与水準の引上げという動きは、実はその前の民主党オバマ大統領の時も、政権末期に同様の連邦法改正の動きがありました。
オバマ大統領は2017年に退任しますが、その前年、2016年に当時の週給 $455(年間 $23,660)から週給 $913(年間 $47,476)に引き上げられる予定でした​が、 実施直前に連邦裁判所によって差し止められ、施行されませんでした。さらに、政権交代でトランプ大統領によりオバマ政権の規則改正案が見直され、2019年、引上げ額を大幅に圧縮した上で、最低給与基準が現在の週給 $684=当時のレートで74,898円(年間 $35,568=当時のレートで 3,894,696円)に着地したという経緯となっています。なお、この改正は2020年1月に施行されています。

さて現在の民主党政権による今回の改正ですが、テキサス州は既にこの新しい規則に対して訴訟を起こしており、予備的差し止め命令を求めています。他の州でも同様の法的チャレンジの動きがあります。そのため、まだまだ時間がかかるとの声も上がっています。なお、州によってはすでにこの連邦法よりも高い水準でエグゼンプトを定義しているところもあります。

読者諸氏には、アメリカでエグゼンプトの最低給与水準が引き上げられる試みがあるという程度の捉え方で今は十分だと思います。加えて、今秋の大統領選挙の動向で、共和党への政権移行となればまた状況は一変する可能性もあります。

さらには昨今の急激な円安がこのニュースのかく乱要因となっています。
今回のエグゼンプトの見直し案を単純に今の円ドルの為替レートで換算し、腕組みをする必要はないと思います。

最後に、21年のOECD調査によれば、日本の平均賃金は $39,711に対してアメリカは $74,738。日本はアメリカの約半分程度の賃金水準ですので、今回のPMP Newsでお示しした金額は、かかる彼我の賃金格差を踏まえれば、哀しい話ですが、このアメリカの水準の半分程度で、日本のホワイトカラーエグゼンプトの議論を行うのが、今の日本の実情に合致しているようにも思います。

以    上