子育て世代の女性の働きやすい都道府県 – 浜銀総合研究所レポートから

子育て世代の女性の働きやすい都道府県 – 浜銀総合研究所レポートから

少子高齢化の歯止めは一向にかからず、人手不足はますます深刻化しています。
企業にとって、貴重で有力な戦力は女性であることはいうまでもありません。

出産 ➡ 子育ての期間は、男性社員も均等に負担を負い、男親・女親ともども、仕事と子育ての両立を図る社会であるべきですが、多くの職場では子育てには女性社員が男性社員よりも大きな負担を背負わざるを得ない現実があります。またこの現実に妥協しながらも少しでも出生率を引き上げるのが日本の喫緊の課題でもあります。

そんな折、PMPと同じくミナト横浜に本社を置く浜銀総合研究所発行の2024年夏「季刊 かながわ経済情報」で “都道府県別『子育て女性世代の働きやすさ指標』” と題するレポートが発表されました。浜銀総研のお許しもいただきましたので簡単にご紹介しましょう。

15歳以上人口の有業者の割合を有業率といいますが、子育て世代(※注:本レポートでは便宜的に25~49歳を子育て世代としています)の女性の都道府県別有業率を見てみましょう。
※出典:『浜銀総合研究所「季刊かながわ経済情報」(元データは総務省「就業構造基本調査」)』
  東京都が、ほぼ全国の中位あたりですが、東京を囲む首都圏である神奈川・千葉・埼玉、また近畿圏の大阪・兵庫・奈良・京都は軒並み低位水準となっています。東京はじめ企業が集中している、女性にこそ働いて欲しい地域の有業率が低いという実態に改めて気づかされます。

浜銀総研では、その上で、女性の子育て世代の有業の程度を決定する要因を、1.公的な保育サービス  2. 私的な保育要因  3. 就労上の男女間の格差 に分け、さらに1.公的な保育サービスは ①学童保育登録率 ②保育所定員率、2. 私的保育要因は ①三世代同居率 ②男性の家事育児負担率 ③男性の長時間労働者比率 ④男性の育児休業等利用率、3. 就労上の男女間格差は ①女性の正規雇用比率 ②女性の管理職比率 ③男女間賃金比率 をそれぞれの指標としています。

浜銀総研での、多分日本でも、最初の試みですので、これを契機に要因の種類、また要因を支える要素についても更なる検証が必要だとは思います。
単に “有業” に焦点を置くのではなく、女性のキャリアを考えれば “有業” の中身の分析も必要ではと思ったりもします。

 浜銀総研が作成した「子育て世代の女性の働きやすさ指標」の都道府県別一覧は下表のようになります。
※出典『浜銀総合研究所「季刊かながわ経済情報」』

ここから求められた子育て世代の女性の働きやすさ指標と女性の有業率の相関係数は0.73と、高い相関関係にあるとのことでした。
実際、指標の高い、高知、鳥取、島根、秋田、青森、福井、富山、山形、新潟のそれぞれの女性の有業率は高いことがわかります。とはいえ、一方で指標の比較的上位にある奈良が有業率最下位である点については、本レポート執筆者自らが指摘もされていますので、あくまでもこの分析結果は、各都道府県が子育て世代の女性にとってより働きやすい職場環境を整備する際の取っ掛かりであり、これには含まれていない要因などの調査も必要となることはいうまでもありません。

PMPが関心を持ったのは、有業率でも同じコメントをした大都市圏における東京の頑張りです。女性労働者数の多い地域を、首都圏、近畿圏、中京圏とすれば、首都圏の神奈川・千葉・埼玉、近畿圏の大阪・兵庫・京都、中京圏の愛知・岐阜・三重の働きやすさ指標がいずれも低位にあるなかで、東京のみ14位と上位グループにあり、特に男性の育児休業等利用率と女性の正規雇用比率は全国トップに位置づけられています。
面白いのは、PMPが本社を構える神奈川。男性の育児休業等利用率は東京に続く2位ながら、女性の正規雇用比率、女性の管理職比率は東京に大きな差をつけられています。予てより、噂話として本社機能等は東京に集中傾向が否めず、片道1時間30分から2時間近い東京までの通勤時間を考えれば、神奈川の住居近くのスーパーやコンビニでの就労が目立つとよくいわれますが、図らずもその噂話の正当性が裏付けられている観を抱きました。
黒岩知事には、更なる東京から神奈川への本社機能の移転のための大きなインセンティブを是非考えていただきたいと思います。

なお、PMP内ではこの浜銀総研のレポートを高く評価しつつも、それにしても「産め、働け、介護しろ」と日本は、男性が女性に身勝手すぎるのでは?という素朴な声も上がっていたこともお伝えしておきます。

※ 本レポートも含め、浜銀総合研究所調査部の調査レポートは こちら からご覧いただけます。

以    上