5.24%、2024年賃上げの動向 – 連合の第3回 回答の集計結果から –
2024年はここまで、29年ぶりといわれた昨年2023年を上回る賃上げの動きを示しています。
経営者側の動きでは、経団連が先月半ばに「実質賃金の増加に向けて、2%程度の “適度な” 物価上昇を前提に、ベースアップと生産性向上によって物価上昇に負けない賃金引上げを継続していく必要がある」といった見解を表明しています。
2024年は一体どの程度の給与の改定が妥当であるかについて、PMP Newsでは、今年は特に連合のプレスリリースが速報性の点では信頼がおける数値であるとし、これまで3回にわたりご案内をしてきました。
・ 1月29日付『今年の賃上げ見通し』
・ 3月14日付『24年賃上げの動向 – 3月13日春闘集中回答を踏まえて』
・ 3月22日付『連合の2024年 春闘の二次集計結果』
先週4月2日、連合は第3回目の賃上げ実績のとりまとめの全体像を発表しています。
1.賃上げ要求の 4,842 組合中 2,362 組合が妥結済みで、うち 1,572 組合(66.6%)が賃金改善分*を獲得している。
注*:賃金改善とは勤続年数や役職、能力などと賃金の関係を示した賃金表を書き換え、月給を底上げすることで、ベースアップは賃金改善の典型例です。
2. 平均賃金方式の回答 2,620 組合について、加重平均は 16,037 円・5.24%(昨年同時期比 +4,923 円・+1.54% )。
第 2 回 回答集計の16,379 円・5.25%とほぼ同水準。
3.組合員 300 人未満の中小組合 1,600 組合の加重平均は 12,097 円・4.69%(同 +3,543 円・+1.27%)。なお、中小組合の賃上げ率は、前回第 2 回 回答集計結果(4.50%)を上回る。
4. 平均賃金方式のうち、賃上げ分が明確に分かる 2,159 組合の賃上げ分加重平均は 11,078 円・3.63%(+4,948 円・+1.47%)。
うち中小組合 1,214組合の賃上げ分は 8,509 円・3.21%(+ 3,171 円・+1.14%)
5. 有期・短時間・契約等労働者の賃上げは、加重平均で、賃上げ額は時給 66.67円(+7.97 円)・月給 13,870 円(+ 4,973 円)。
引上げ率は概算でそれぞれ 6.10%・6.18%となり、一般組合員(平均賃金方式)を上回っている。
さて、特に外資系企業で本国から着任している人事部長からは、「春闘 – Spring Battleとは何か?」に始まり、「加盟率16%しかない労働組合の賃上げの動向が、なぜ日本の労働市場にここまで大きな影響を与えるのか?」という質問を受けることがよくあります。
連合はそれぞれの業界のリーダーとなる大手企業が比較的多く属しているため、連合での結果がそれぞれの産業界の賃上げ相場を作り出すという傾向があることは否めません。
加えて、“春闘”は、労働組合の組織率が35%近くだった1955年に始まりましたが、1970年代にはストライキも珍しくありませんでした。大手メディアは一貫して春闘状況を大きく報道していました。メディアの力が毎年の労働市場の賃上げの具体的なシグナルを与えることになり、結果としてそれぞれの労働市場の相場観を形成しているともいえましょう。
また経営側としても、連合との交渉によりそれぞれの産業界の賃上げの相場がある程度形成されるのは望ましく、さらに近年はこれに政府が加わり、政・労・使の3者による日本の労働市場の賃上げの相場の形成という、海外にはない珍しい状況になっていると思います。
以 上