「年収の壁」支援強化の具体策を発表。
9月25日、岸田総理が国民に直接語りかけた経済対策の中で、かなりの時間を費やした「年収の壁」対策について、この度、厚生労働省から「106万円の壁」「130万円の壁」の具体策が発表されました。
注1)106万円の壁:週20時間以上の労働時間かつ月収8.8万円(=年収106万円)以上の人は、社会保険の被保険者となり社会保険料負担が発生。ただし、現在は社員数100人を超える事業場が対象(24年10月からは50人超に変更)
注2)130万円の壁: 130万円を超えると扶養から外れ、社会保険への加入義務が発生。社会保険料負担が生じる。(注1に該当しない事業場が対象)
厚生労働省からは、第3号被保険者の約4割が就労しており、また配偶者のいる女性パートタイマーの21.6%が以下のような割合(複数回答可)で就業調整しているとの報告もあります。
かかる実態を踏まえて、厚生労働省が発表した「壁」対応の概要は以下の通りです。
まず「106万円の壁」から詳しく見ていきましょう。
総理からも9月25日当日に、「事業主が労働者に『106万円の壁』を超えることに伴い、手取り収入が減少しないよう支給する社会保険適用促進手当を創設させる。この取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円を支給する新助成金を創設する。社会保険料を国が実質的に軽減し「壁」を越えても、給与収入の増加に応じて手取り収入を増加させる。」との説明がありましたが、厚生労働省発表の詳細は以下の通りです。
但し、この社会保険適用促進手当については、給与・賞与とは異なる“手当”として位置づけるとしており、社会保険の標準報酬の算定対象からは除外されることになります。もっともこの特別な取り扱いは、最大でも2年間という時限的なものとなっています。なお、「壁」の対象からは外れる社員の方々に対しても、同様の社会保険適用促進手当を特例的に支給する場合は、同じく最大2年間ではありますが社会保険の標準報酬の算定対象から外すとしています。詳細発表はこれからのようですが、来年度の賃上げの際の検討事項に加えることもできるかもしれません。
次に「130万円の壁」。
総理は「被用者保険の適用拡大を推進するとともに、次期年金制度改革を社会保障審議会で検討中」と言われていましたが、厚生労働省からの発表は以下の通りです。例えば残業のように労働時間延⾧等に伴う一時的な収入変動による場合は、事業主の証明により被扶養者認定を円滑に行うという考え方が示されました。
また多くの企業で導入されている家族手当の内の配偶者手当についても各企業での見直しの手順をフローチャート等で発表するとのことです。
配偶者手当については、厚生労働省では、収入要件のある配偶者手当も就業調整の要因となっているとの問題意識を持っており、とは言え、配偶者手当の見直しは不利益変更となり得るため、労働契約法や判例等に留意した対応が必要であるとした上で、来年の賃上げ時期に例えば、配偶者手当を廃止又は縮小し、基本給や子どもへの手当を増額するなどの配偶者手当の見直しの議論を進めたいとしています。
以 上