裁量労働制の法改正について – 2024年4月1日施行
来年4月1日からの改正労働基準法施行規則の施行に伴い、裁量労働制の手続きに追加される事項があります。詳細は以下の通りです。
留意事項として、以下の下線部分が今回追加されます。その上で、事業場の対象労働者全員を対象とする措置、個々の対象社員の状況に応じて講ずる措置をそれぞれ一つ以上選択します。
下線部について、2024年4月以降は労使で協議の上、決定・決議しておく必要があります。
裁量労働については、2018年のいわゆる働き方改革国会で法改正による裁量労働の適用拡大法案が、厚生労働省が用意した一般労働者と裁量労働制対象者との労働時間の比較の仕方が不適切であった等が判明、働き方改革関連法案の国会提出前の段階で当該法案から削除されたという出来事がありました。厚生労働省の労働審議会労働条件分科会で、裁量労働については継続審議扱いとなっていましたが、結局は、現行の対象業務の明確化に留め、対象業務を拡大は行わないという結論に落ち着いています。一方で労働者保護の観点では活発に討議され、本人同意や健康・福祉確保措置の強化などが盛り込まれました。
法改正の決定に先立つ、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会の議論では、専門業務型は、実態調査から、法の潜脱とも思えるような低い処遇や、対象業務とはいえ経験が全くない者が対象になっている実態などが示されるといった不適切な運用がハイライトされており、また対象労働者を定めるに当たっての適切な協議を促すためには、使用者が賃金水準を労使協議の当事者に示すことが望ましいという方向性が打ち出され、企画業務型の改正に落ち着きました。全般に労使委員会のモニタリング機能を高めることを基本的な姿勢としています。
なお、対象業務の拡大については、専門型の対象業務に関して、「銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言をする業務」が追加されることになりました。しかしながら、この“顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく合併及び買収に関する考案及び助言をする業務”はあくまでも“銀行又は証券会社”に限定されており、それ以外の他業態でM&Aに関する調査・分析及び考案・助言を行うことは法違反とされています。なお、調査・分析のみを行う業務についても専門裁量の適用はNGであるという発言もみられています。
総括すれば、働き方改革国会当時盛んに議論された裁量労働の対象拡大は顧みられることなく、労働者保護という視点でさらに法の縛りがきつくなる運用へと変容していくことになります。
PMPでは、この動きを受けすでに多様な働き方の一環としては、裁量労働も含めたみなし労働時間制には頼らず、フレックスタイム制とリモートワークを主軸とする新しい人事制度の構築をクライアント各企業と一緒に模索しています。
以 上