労働条件明示義務と裁量労働制の変更 – 労働基準法省令改正の見通し
1月10日付 PMP Newsでは裁量労働の対象業務拡大についてご案内しました。今回はその続き、対象業務拡大以外の変更点について、厚生労働省の審議会、労働条件分科会での議論を整理してみました。
労働条件明示事項に就業場所・業務の変更の範囲を追加
労働条件の明示は労働基準法第15条「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」とされ、雇用契約締結時の義務でした。一方で、労働契約法では第4条「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする」と労働契約の内容の理解の促進について定め、同条第2項では、“できる限り書面による”とされています。
一方で、実際の労務の現場では、就業規則の定めを根拠とする転居を伴う配転命令の際の労務トラブルや、事業場の閉鎖や職務等を廃止された場合の限定的な働き方正社員の解雇に繋がりかねないリスクなどが議論され、雇用契約の多様な正社員に限らず労働者全般について、労働基準法の労働条件明示事項に就業場所・業務の変更の範囲を追加するべきという結論に落ち着いたようです。
裁量労働の変更 – 専門型対象業務の拡大以外の事項について
・・・ 専門型対象業務については1月10日付 PMP Newsをご参照ください
1.まず、企画型と同様専門型についても、本人同意を得ることや同意をしなかった場合に不利益取扱いをしないこととすることとなる見込みです。同じ裁量労働でありながら、それぞれ別々の経緯で時期も違って成立したという事情があるとはいえ企画型では本人同意を求め、専門型ではこれを求めないという現状の法体系が変ですよね。
2.そうなると企画型の要件である労使委員会の取扱いは今後どうなるか?については、“労使委員会の導入促進”として掲げられ、「労使委員会が制度の実施状況の把握及び運用の改善等を行うこととすること等が適当である。」とし、「労使委員会の開催頻度を6か月以内ごとに1回とするとともに、労働者側委員の選出手続の適正化を図ること」。注目すべきは「専門型についても労使委員会を活用することが望ましいことを明らかにすることが適当である」の部分です。
3.苦情処理措置についても、「本人同意の事前説明時に苦情の申出方法等を対象労働者に伝えることが望ましい」、「労使委員会が苦情の内容を確実に把握できるようにすることや、苦情に至らないような運用上の問題点についても幅広く相談できる体制を整備すること」としています。
4. 「健康・福祉確保措置として、勤務間インターバルの確保、深夜業の回数制限、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の適用解除)、医師の面接指導が追加されています。また、健康・福祉確保措置の内容を『事業場における制度的な措置』と『個々の対象労働者に対する措置』に分類した上で、それぞれから1つずつ以上を実施することが望ましい」としています。
5.企画型の所轄労働基準監督署宛定期報告については現状6か月以内ごとが初回は6か月以内に1回及びその後1年以内ごとに1回とするに変更の予定です。
6.労使協定及び労使委員会決議については本社一括届出を可能とするとしています。
最後に、 今後の労働時間制度についての検討として 働き方改革関連法で導入又は改正された、時間外労働の上限規制、フレックスタイム制、高度プロフェッショナル制度、年次有給休暇制度等は、同法の施行(注:2019年4月施行、PMP)5年後に、施行状況等を踏まえて検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずることとされていることを踏まえ、今後、施行状況等を把握した上で、検討を加えることが適当であると結んでいます。
詳しくは厚生労働省HP「 今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」をご参照ください。
以 上