衛生委員会の規模 – 最小単位は実は4人
衛生委員会は健康障害を防止するための基本となるべき対策などの重要事項について、労働者の意見を反映させ十分に調査審議を行う目的で、労使で構成される委員会です。社員規模50人以上の事業場は衛生委員会の設置が義務付けられています。
経産省の健康経営を引用するまでもなく、社員の健康管理は企業にとってますます重要となりますので、企業経営の観点から衛生委員会をいかに活用するかという視点も大事だろうと思います。
その衛生委員会は、1972年、労働安全衛生法の公布と同時に設置が義務付けられました。50年も前の事でもあり、最近の衛生委員会の運営要領などは前任からの踏襲となっており、あまり見直されないケースなども珍しくありません。
労働安全衛生法の衛生委員会の規定を単純に引用すると、最低でも7人の委員会となります
改めて、衛生委員会の構成という基本的事項に整理してみました。
労働安全衛生法第18条の2では「衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする」
1.当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
2.衛生管理者のうちから事業者が指名した者
3.産業医のうちから事業者が指名した者
4.当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
同第17条の安全委員会の以下の項が衛生委員会でも適用となっています。
「事業者は、第一号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。」
それらを満たす衛生委員会は左図の通り。委員会規模は7名となります。
次に、厚生労働省の衛生委員会についての注意事項を見ると、「1以外の委員については、事業者が指名すること」「委員会の構成員の人数については、法令上の定めはない。事業の規模、作業の実態に即し、適宜決定して差し支えない」とあります。
ここまでのロジックから衛生委員会の最小規模は4人だがPMPは最低でも5から6人程度を推奨します
ここでのポイントは、会社が指名した者を労働者代表が推薦してはならないという記載はないという点です。
実際、産業医は委員として会社の指名となりますが、労働安全衛生法が求める産業医の役割を考えれば100%会社側の利益代表ではなく、同じ産業医を労働者代表が推薦することも、労使間で調査審議するという衛生委員会の趣旨に外れるものでもないと考えます。同様に、衛生管理者も同法が求める役割を考えると、会社指名の衛生管理者を労働者代表が推薦することも考えられるとも思います。さすがに、会社が指名する“衛生に関し経験を有する社員”を労働者側委員として推薦するのはやや無理があるかもしれませんが、労働者代表が推薦しようとしている社員を会社が指名する事はあるかもしれませんね。
何れにしろ、衛生委員会の法の下での最小規模は4名、PMPは5〜6名の衛生委員会でも十分に衛生委員会として機能するようにも思います。
所轄の労働基準監督署の対応には注意を要します
とは言え、否定的な対応をする労基署の担当官がいることも予め注意喚起します。筆者も今回、都内の労基署の安全衛生課の担当官と話をしましたが、最初はかなり否定的なニュアンスでした。このNews Letterの記載内容に沿い繰り返し説明したところ、折り返しの連絡となり、その間上部の労働局も巻き込んでエスカレーションしました。ここまでの経緯を経て、このNews Letterとなったという経緯があります。
労基署の担当官とは、色々と話し込み貴重なアドバイスもいただいています。特に皆さんに注意喚起したいのは、法律の条文解釈としては、News Letterでの記載通りとなりますが、労基署には、法違反に対する是正勧告以外に、法違反の疑いに対する“指導”という武器も持っています。企業に労基署より指導書が発せられると、通常1か月程度の期限付きで文書による回答が求められます。その際、衛生委員会設置の法の趣旨を参照して、このように企業側が指名した委員を労働者代表が推薦し指名したような衛生委員会で、労使間でその事業場の健康保全義務が実際に履行されているかとどうかなどを議事録や事情聴取等で確認されるような事態も十分に考えられます。
PMPとしても徒に、企業主導の衛生委員会の設立を勧める意図などは全くありません。しかしながら、17%という労働組合の組織率から、実はほとんどの企業が労働者代表方式となっている現状で、衛生委員会の労働者側委員の指名については労働者代表の方が困っているという話はよく聞きます。その際、日ごろ信頼している産業医の先生を労働者側が推薦しても良いという工夫は、労働者代表の方が少しでもホッとされるのではないかと思い、このNew Letterを発信する次第です。
以 上