労災の特別加入範囲の拡大
9月から、労働者災害補償保険が改定され、次の方々が労災保険の特別加入の対象となります。
1. 自転車を使用して貨物運送事業を行う者
PMP注1: コロナ禍で利用が拡大しているウーバーイーツの自転車配送者を念頭におくと分かり易いですね。これを意識しているはずです。
2. ITフリーランス
PMP注2: 近年、盛んに議論されている多様な働き方の広がりを背景にこれまでは労働者の定義から外れることで対象外とされていたギグワーカーに対する労働法各法の保護拡大の一環として位置付けられると思います。
詳細は以下の通りですが、もともと労災保険の特別加入の対象には労災保険施行規則に、具体的な職種が事細かに定められています。
今回の改定もこの施行規則の改定(国会の審議によらず厚生労働大臣が決定できます)で行われているため、掲記のような具体的な職種となっています。換言すれば拡大解釈等弾力的運用は難しいのではないとないかとPMPでは考えています。
労災保険はもともと労働者の業務上の疾病障害に対するセイフティネットワークですが、労働者以外も労災保険の対象となる特別加入は、社会経済情勢の変化を踏まえ対象範囲や運用方法等について、適切かつ現代に合った制度運用となるよう見直しを行うこと(令和2年雇用保険保険法一部改正の際の衆議院付帯決議)とされていました。令和2年7月の閣議決定では、「フリーランスで働く人の保護のため、労働者災害補償保険の更なる活用を図る特別加入制度の対象拡大について検討する」とされ、それを受けての今回の改定ですが、特に自転車配送については、やはりコロナ禍に伴い急増したウーバーイーツなどの食事のデリバリーがどうしても念頭に浮かんできます。
必要に応じて弾力的に法律を見直すべきではありますが、目の前の現象だけにとらわれることなく、その先も見通した上で体系的に整理して欲しいと思います。
厚生労働省の発表をもう少し見ていきましょう。
1.自転車を使用して貨物運送事業を行う者
これまで、自動車及び原動機付自転車を使用して貨物運送事業を行う者を、一人親方等として特別加入の対象範囲としていましたが、9月からは、自転車を使用して貨物運送事業を行う者も、特別加入の対象となります。
厚労省通達では注として、仲介事業者を利用した飲食物等のデリバリーサービスに固有の「直接付帯する行為」としては、例えば、自宅から配送物を受け取る店舗や配送スポットに移動する行為が該当するが、その移動経路、受発注の状況(アプリの使用等)、被災時の服装、所持品等の外形等を踏まえ業務遂行性を十分に確認 -とあります。ウーバーイーツの実態をよく調べたのだろうと感心しますが、自転車配達は今後、果たしてこれだけに留まるのだろうかと言う疑問が湧いてきます。
2.ITフリーランス
労働者以外の方であって、「情報処理に係る作業」を行う方について、新たに特別加入の対象となりました。
更に通達では、「情報処理システム(ネットワークシステム、データベースシステム及びエンベデッドシステムを含む)の設計、開発(プロジェクト管理を含む。)、管理、監督、セキュリティ管理若しくは情報処理システムにかかわる業務の一体的な企画またはソフトウエア若しくはウエブページの設計、開発(往路ジェクト管理を含む。)、管理、監査、セキュリティ管理、デザイン若しくはソフトウエア若しくはウエブページに係る業務の一体的な企画その他の情報処理に係る作業」としています。
また「一般的なデスクワーク作業を行う場合やIT講師と言われる職種は対象外ともしています」
詳細は、厚生労働省通達 基発0803第1号「 労働者災害補償保険法施行規則等の一部を改正する省令の施行等について」をご参照ください。
以 上