人事労務実務関連 4月1日から36協定等、労基署届出書類の押印省略がスタート
労働基準法施行規則等の一部改正の省令が昨年12月22日に交付され、本年4月から36協定等、労働基準監督署宛の届出の際、社印の押印、労働者代表の押印または署名が省略されることになります。
押印すると受理されない?
筆者は、単純に4月からの36協定届の押印は不要となる、これは押印しても押印しなくとも構わない という変更だと考えていましたが、通達を見る限りは4月からは押印なしの新様式とする という変更のようです。
下図、厚労省が公表した36協定の新しい手続きのパンフレットからの抜粋をご参照ください。4月1日以降の36協定届は新様式での受付となっています。
注:これについて所轄労基署に問い合わせしましたが、明快な回答はありませんでした。本省からは、所轄の混乱を回避するため4月以降も当面の間は旧様式の届出も受理を認める方針で調整中。ただし、通達にある通り、今後は新様式とする、との事。
いつもは“基発”という厚生労働省労働基準局長通達を参照して、新法や法改正の実務対応を解説するのですが、今回は、その下の厚生労働省労働基準局監督課長による通達までを確認しました。基監発1222第1号には「例えば郵送で旧書式が届け出られた場合、チェックボックス不備として返戻し、改めて届出を行うように指導する」との見解が各所轄労基署宛に発出されています。今後は、“押印しなくとも良い”ではなく、“押印せずに新様式にて届け出る”という事になります。
36協定の新様式とは?
4月からは労働基準法と最低賃金法の規定に基づく許可。認可、認定若しくは指定の申請、届出又は報告を行う際の押印(又は署名)と使用者の職名氏名欄(押印/署名は省略)の間に以下のような文章とチェックボックスを挿入し、チェックボックスに☑する事になります。
・上記協定の当事者である労働組合が事業場全ての労働者の過半数で組織する労働組合である又は上記協定の当事者である労働者の過半数を代表する者が事業場の全ての労働者の過半数を代表する者であること。☐
(労働組合の場合はここで終了ですが、労働者代表の場合はさらに以下の文章とチェックボックスの☑が必要となります。)
・上記労働者の過半数を代表する者が、労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でなく、かつ、同法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって使用者の意向に基づき選出されたものでないこと。☐
詳しくは 以下のURL「2021年4月~ 36協定届が新しくなります」(厚生労働省)をご参照ください。 https://www.mhlw.go.jp/content/000708408.pdf
その他、実務上の注意点
以下、列挙します。
- まずご注意いただきたいのは労使協定についてです。施行規則の改正は行政手続きである協定届の押印省略であり、労使協定の押印の取扱いについては直接影響を及ぼすものではないとしています。これは、別途労使間で、押印に替え双方の合意が明らかとなる方法によるもの合意形成をすれば、協定の押印も省略できる(=行政は関知しない)事になると思います。
- 就業規則の制定や改定に伴う労働者代表の意見書も労働者の押印又は署名は不要となるとの事です。
注:意見書は行政の所定の様式はありません。 - 今回の省令改正でも「36協定は届出をもって有効になる」という扱いについては変更ありません。4月1日に36協定を更新される企業は多いと思いますが、この点にもご留意ください。
36協定届以外にも多くの届出の押印が不要となります。ただし、今回の省令改正は労基法・最賃法関連のみです。
36協定以外に、押印省略される主要な届出は以下の通りです。なお、※を付したものは、労働者代表の押印省略、記名のみとなるものです。
① 1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届※
② 清算期間が1箇月を超えるフレックスタイム制に関する協定届※
③ 1年単位の変形労働時間制に関する協定届※
④ 事業場外労働に関する協定届※
⑤ 専門業務型裁量労働制に関する協定届※
⑥ 企画業務型裁量労働制に関する決議届※
⑦ 企画業務型裁量労働制に関する報告
⑧ 高度プロフェッショナル制度に関する決議届※
⑨ 高度プロフェッショナル制度に関する報告
⑩ 適用事業報告
詳細は、基発1222第4号、 https://www.mhlw.go.jp/content/000711515.pdf をご参照ください。
以 上