賃金等債権の消滅時効の見直し – 続報 –

賃金等債権の消滅時効の見直し – 続報 –

昨年夏に第一報を発信いたしました本件、改正民法が2020年4月から施行されますが、これに伴い 労基法第115条の時効について、厚労省の労働政策審議会の労働条件分科会で議論を重ねられ、1月10日に改正労基法案要綱が厚労省より発表されました。
順調にいけば、改正民法の施行に合わせて2020年4月から施行されるため、早めのお知らせをいた します。

1.賃金債権の消滅時効期間について
今年の4月より賃金債権の消滅時効は2年から3年に変更されることになります。
分科会報告では「当分の間、現行の労基法第 109 条に規定する記録の保存期間に合わせて3年間の消滅時効期間とすることで、企業の記録保存に係る負担を増加させることなく、未払賃金等に係る一定の労働者保護を図るべきである。」とのことから3年とし、さらに、「改正法施行後、労働者の権利保護の必要性を踏まえつつ、賃金請求権の消滅時効が果たす役割への影響等を検証し、」「改正法の施行から5年経過後の施行状況を勘案しつつ(略)、必要があると認めるときは(略)必要な措置を講じることとすべきである。」とし、民法にあわせて「消滅時効5年とする」可能性があるとしている点も留意すべきです。

2.付加金
付加金についても同様に3年となります。分科会報告では「付加金については割増賃金等の支払義務違反に対する一種の制裁として未払金の支払を確保することや私人による訴訟の持つ抑止力を強化する観点から設けられており、その請求期間については、賃金請求権の消滅時効期間に合わせて原則は5年としつつ、(当面は)消滅時効期間と同様に、当分の間は3年とすべきである。」としています。

3.適用開始
分科会報告では「施行期日以後に賃金の支払期日が到来した賃金請求権の消滅時効期間について改正法を適用することとし、付加金の請求期間についても同様の取扱いとすべきである。」としています。

巷間、すでに賃金未払いや残業代未払いを謳ったセミナーが散見されており、改正労基法が刺激となり消費者金融や信販会社の過払い金問題と同じように、未払い賃金を求める動きが加速化する可能性も考えられます。
労働時間の管理には一層の注意を払い、社員一人一人の日々の実働時間を正しく把握することが本件のリスクマネジメントの原則となると思います。

なお、有給休暇の消滅時効については、「年次有給休暇は、労働者の健康確保及び心身の疲労回復等の制度趣旨を踏まえれば、年休権が発生した年の中で確実に取得することが要請されているものであり、」「年次有給休暇の取得率の向上という政策の方向性に逆行するおそれもある」ことから時効期間の見直しは行わず、現行通りの2年間とするとのことです。