今後の労働時間管理の見通し

今後の労働時間管理の見通し

頭書の件は、昨秋の大手広告代理店の過労死問題を契機にさらにヒートアップした感があります。
PMP Newsでも今年に入り複数回、本件関連情報を発信していますが、この時点でこれらを振り
返り、最新情報も付加しながら今後の動向を展望してみましょう。

1.改正労基法案は成立に向けて動き出すか!
改正労基法案は第189回国会提出法案(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/189.html)。
今年の6月に終わった国会は第193回。随分長い間審議入りすらされずに棚ざらしでしたが、
今秋の臨時国会で審議される見通しです。先月13日健康管理策を付帯条件として一旦了解
した連合神津会長が下部組織からの突き上げをくらい、27日の臨時の中央執行委員会で
正式に反対に方針変更したものです。
改正法案は添付のHPアドレスをご参照頂きたいが、年収1075万円を要件とした高度
プロフェッショナル職の導入や企画業務型裁量労働の適用拡大が目玉となります。
海外に目を向ければ、今回の対象となる職種が労働時間管理の対象とされ、残業という成果とは
無関係の労働時間に応じて報酬の支払額が決定されるという、従来の日本の労基法の仕組み
自体が異端。過重労働を回避したいのであれば、残業代に頼らず真正面から健康保全を目的
とした労働時間の規制を行えば済みます。

2.労働時間の上限規制の見直しは6月5日厚生労働省の政策審議会が建議としてその内容を
発表しました。HPアドレスは以下となのでご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11201250-Roudoukijunkyoku-Roudoujoukenseisakuka/0000166797.pdf
概略を纏めると、従来の特別条項つき36協定の仕組みが大きく変わるものと思われます。
すなわち①月45時間、年間360時間という法定労働時間を超える時間外労働の原則は堅持。
例外として② 1)年間720時間を上限とする 2)単月、休日労働を含めて100時間まで 
3)2~6か月であれば休日労働を含めて80時間まで 4)月間45時間を超えることができるのは
年に6回まで を認めるが、この場合、企画業務型裁量労働の健康確保措置(代償休日又は特別な
休暇の付与、健康診断 の実施、連続した年次有給休暇の取得促進、心とからだの相談窓口の設置、
配置転換、産業医の助言指導に基づく保健指導に加えて、長時間労働を行った場合 の面接指導、
深夜業の回数の制限、勤務間インターバル等の健康確保措置を追加するとしています。

上記の1も2も労働基準法の改正となりますが、今年の6月中旬から下旬にかけては、別々の改正法案
として、まず積み残しの労働基準法改正案の審議を先行させ、労働時間の上限規制は審議されても発効は
平成31年度とされていましたが、上記連合との根回しが結果的にとん挫したため、これら2つの労基法改正
案を一つにまとめて今秋の臨時国会に提出する見通しとの事です。
36協定と言う労働時間管理の基本の修正時期が早まることになるかもしれません。何れにしろ、各社とも
働き方改革を進めるに際しても、足元の労働時間管理の仕組みを再点検し、場合によっては根底から見直す
必要があるかもしれません。